飲食店で原価を管理するには、「理論原価」「仕入原価」「実際原価」の、三つの原価について知っておく必要があります。
三つの原価はそれぞれが単独ではなく関係性があります。
ここでは基礎として「理論原価」についての知識と、応用として「理論原価」を使用した原価の低減方法を説明します。
Writer:Asuka Food Consulting
理論原価を学ぶ前に原価の基礎の基礎として
>原価の基礎知識 原価とは をお読みください。
>原価の基礎知識 仕入原価はこちら
>原価の基礎知識 実際原価はこちら
Table of Contents
理論原価とは
理論原価とは、商品を作った時に掛かる原価(食材費)の総和のことです。
上記の内容をわかりやすく説明していきます。
例えば、ハンバーグ定食を作るとき、
ハンバーグ150円
サラダ50円
スープ50円
ライス50円という原価が掛かったとします。
この場合のハンバーグ定食の原価は、300円ですね。
それでは、ハンバーグ定食が100個売れた場合の原価の合計は、
ハンバーグ定食の原価に販売数を掛けることで計算できます。
300円×100個=30,000円(原価の合計)
この30,000円を理論上の原価(理論原価)といいます。
なぜ理論上かというと、
調理の過程でハンバーグを焦がしてしまい新しく焼き直したり、 サラダを規定量より多く盛り付けてしまったりすると、 余計に材料費が 掛かりますよね。
しかし、この原価300円には、余計に 掛かってしまった材料費(原価)は含まれていないわけです。
あくまでも、レシピ通りで失敗しないで作った場合の原価ですので、 理論上の原価(理論原価)といいます。
あるべき原価(理論原価)といった方が分かりやすいかもしれませんね。
次に、実際のお店では、複数の商品を扱っていますので、その場合の理論原価の計算方法を説明します。
商品が複数ある場合、
上記のように個々の商品の原価 に販売数を掛けて全て足した数字が理論原価になります。
例) 〇〇店では、A、B、Cという三つの商品のみを販売しています。
A商品 価格1,000円 原価300円 100個販売
B商品 価格 800円 原価280円 150個販売
C商品 価格1,200円 原価270円 80個販売
この場合の理論原価の計算方法は、
まず、個々の商品の原価に販売数を掛けます。
A商品の原価 300円 × 販売数 100個 = 30,000円
B商品の原価 280円 × 販売数 150個 = 42,000円
C商品の原価 270円 × 販売数 80個 = 21,600円
次に、それぞれの商品の原価の合計を全て足します。(総和)
3000円 + 42000円 + 21600円 = 93,600円
式を一つにまとめると、
(300円×100個)+(280円×150個)+(270円×80個)= 93,600円
したがって、このお店の理論原価は 93,600円 ということになります。
冒頭の「総和」という表現は上記の意味です。
理論原価率とは
理論原価率とは、 理論原価を売上で割った数値のことを、「理論原価率」といいます。
理論原価率の計算式
上記の場合、
93,600円(理論原価)÷ 316,000円(売上)×100%= 29.6%
29.6%が理論原価率となります。(小数点第2位を四捨五入)
ポイント
➀ 理論原価率とは、理論原価を売上で割った数値のこと。
➁ 理論原価 ÷ 売上高 × 100% = 理論原価率
個別標準原価と個別標準原価率
個別標準原価とは、商品(個別)を作った時にかかる、レシピ上の原価のことです。
上記のハンバーグ定食であれば、ハンバーグ定食という個別商品を作った時の、300円という原価を個別標準原価(個別商品原価)と言います。
※ハンバーグ定食という「個別」の商品の、レシピ上の基準「標準」となる食材費「原価」
個別標準原価率とは、個別標準原価を販売価格で割った数値のことです。
300円÷1,000円×100%=30.0% (小数点第二位を四捨五入)
理論原価を計算するには、
上記の
A商品原価 300円
B商品原価 280円
C商品原価 270円
というように、個別の商品原価(個別標準原価)を算出しておく必要があるのです。
大手チェーン店では、実施されていますが、個人店では、算出されていないお店が多いのが現状です。
理由は、計算に手間(歩留まり計算)がかかる為です。
理論原価を算出するには、個別商品原価を計算しておかないといけません。
個別商品原価の計算方法は下記をご覧ください。
重要・・・個々の商品の原価である、個別標準原価の計算が間違っていると、理論原価に正確性がなくなりますので、間違わないように計算してください。
また、仕入価格の変動や使用する量の変更があった時には、個別標準原価も見直します。
※中小個人店であれば、店舗に社員が一人というのも珍しくないと思います。現場の作業をしながら、その都度、レシピ表やレジ原価設定等を変更するのが困難な場合は、半年に一回は見直しましょう。
理論原価のメリットとデメリット
理論原価はロスを含まない原価、実際原価はロスを含んだ原価です。
理論原価と実際原価との差額からロス額を算出することが可能になります。
したがって、ロスを減らせれば、その分が利益となるのです。
また、新商品の追加や商品の値下げ、値上げを行ったときに、理論原価率を活用することにより、トータルの原価率がどのように変化するのかを予測することも可能になります。
しかし、POSを導入していないお店や個人店においては、個別商品原価を算出したとしても、日々の販売数を商品ごとにカウントし、手計算するのはほぼ不可能です。
まとめ
個別商品原価とは、例えば「ハンバーグ定食」という個別の商品を作った時にかかる原価
理論原価とは、個別商品原価に販売数を掛けたもの
理論原価率とは、理論原価÷売上高×100%
理論原価は、レシピ上の原価であり、ロス分を含んでいません。それに比べて、棚卸を実施し求めた実際原価は、ロスを含んだ原価です。
したがって、実際原価から理論原価を引くことにより、ロス分がいくらなのかがわかるのです。
また、理論原価を活用することにより、お店のトータルの原価を下げたり上げたり(計画原価管理)することも可能になります。
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