飲食店で原価を管理するには、「理論原価」「仕入原価」「実際原価」の、三つの原価について知っておく必要があります。
三つの原価は、それぞれが単独ではなく関係性があります。ここでは基礎として「仕入原価」についての知識と、応用として「仕入原価」を使用した日々の原価管理方法を説明します。
writer:Asuka Food Consulting
仕入原価とは
仕入原価とは、仕入れた食材の金額(食材費)のことです。
例えば、
A業者(精肉)から、2,000円分のお肉を仕入れた。
B業者(青果)から、1,000円分のお野菜を仕入れた。
C業者(飲料)から、3,000円分のドリンクを仕入れた。
そうすると、原価の合計は
2,000円+1,000円+3,000円= 6,000円
この場合の、6,000円が仕入原価(仕入れた食材の金額)となります。
仕入原価率とは
仕入原価を売上で割った数値を、仕入原価率といいます。
式で表すと、
上記で売上高が、20,000円の場合、
6,000円÷20,000円×100%= 30.0% (小数点第二位四捨五入)
この場合の、30.0%が仕入原価率となります。
日々の原価管理は「仕入原価率」で管理する
理論原価は商品を販売した後の数字、実際原価の算出には棚卸が必要です。
どちらも「結果」としての数字(数値)なので、 目標値を設定しても「管理」(コントロール)することが難しいのです。
それに比べ仕入は毎日(お店によりますが)あり、仕入原価を管理する ことにより、目標値(基準)と照らし合わせ、発注調整しながら 運営することが可能になります。
■当日の仕入原価の計算方法
当日の仕入原価 ÷ 当日の売上高 × 100% = 当日の仕入原価率
■月中での仕入原価の算出方法
例) 4月1日から4月15日までの15日間で、仕入原価 50万円 売上高 150万円の場合
4月1日~15日までの仕入原価合計 ÷ 4月1日~15日までの売上高合計 × 100% = 4月1日~15日までの仕入原価率
50万円 ÷ 150万円 × 100% = 33.3% となります。
例えば、4月の仕入原価率目標が、30%なら、現状は、3.3%オーバーしている状況です。
金額に直すと、
仕入額÷150万円×100%=30%
仕入額=150万円×30%
仕入額=45万円
現状仕入額50万円-目標仕入額45万円=差額5万円
目標にくらべて5万円オーバーしていることがわかります。
仮に、4月の着地売上高が300万円になりそうだと予測すれば、仕入金額を調整する必要が出てくるわけです。
このように、仕入原価(率)を日々管理することにより、目標値に近づけることが可能になります。
目標値の決定
最終的な原価管理は、実際に掛かった「実際原価」で見るのが良いですが、仕入原価のみで原価管理をしている場合の目標値の設定方法は、前年同月の仕入額(仕入率)を基本に本年同月の仕入目標を決定します。但し、大幅にメニュー価格等の変更を行った場合は、前月を参考に決定してみましょう。
上記を参考に、自店の仕入原価(率)を下記の「業者別仕入管理表」を参考に、エクセルを使い、算出してみましょう。
仕入原価は業者別に管理する
仕入原価は業者別に管理するのが原則です。
その理由は、目標値よりも仕入原価率が高ければ、どこの業者の仕入が多かったのかが分かり、原因特定から改善することも可能になるからです。
納品書は税抜金額と消費税を別に記入した納品書を業者に依頼しましょう。
仕入管理表には税抜金額を記入し、税抜売上げ高との比較で仕入原価率を算出します。
業者によっては、食材と消耗品などが同じ伝票に記載されている場合があります。別々に記載してもらうか、仕入額を計算するときに食材だけを算出するようにしてください。
仕入を配送ではなく、スーパーなどへの買い出しを行っているお店は、業者別ではなく、食材別に管理します。
例) 精肉 魚 野菜 など
また、精肉でも、鶏肉・牛肉・豚肉を扱っているが、鶏肉メインの居酒屋など、比重が多い食材は、個別に鶏肉の仕入を抜き出し、重点管理します。
使う頻度が高い食材は、仕入頻度も多くなり仕入額も増加します。また、使う頻度が少ないにも関わらず、ロット単位で仕入れなければならない食材なども重点管理の対象としましょう。
業者別仕入管理表の作り方
下記は、エクセルで作成した業者別仕入管理表です。
上記を参考に、仕入原価表の作成方法を説明します。
仕入管理表の説明
目標値・・・前年同月の数値
F値・・・・各業者ごとの現状の売上に対する仕入原価率
GAP・・・・目標値 ― F値
金額・・・・GAPの数値を金額で表示
※F値(エフチ)とは、FoodCostの値 原価率の事
1) 表の見方
A業者を例に説明します。
目標値 20%(C37)・・・前年同月の業者ごとの仕入原価率
F値 19.3%(C38)・・A業者の累計仕入原価÷累計税抜売上高
GAP -0.7%(C39) 目標値-F値
金額 -2,593(C40)・・GAPの-0.7%を金額に直した数字
A業者の「-2,593」とは、A業者の仕入目標値「20%」に対して、現在の仕入値「19.3%」との差額を金額に直した数字です。目標より下回っているということです。
逆にB業者の場合、「3,704」円、目標値よりも多く仕入れているということです。
ポイントは、差額を金額で表すことです。差額分を金額で表示することにより、食材を仕入または購入するときの目安となり、仕入原価を調整することが可能になるからです。
2) 当月仕入目標の決定方法(表L37)
■ 前年と商品構成が同じ場合
前年同月の各業者ごとの仕入額を伝票や請求書等から算出。
それを前年同月売上で割ることにより、 各業者ごとの前年同月の仕入原価率を算出します。
※A業者の目標値20%(C37)とは、前年同月のA業者の月間仕入額60万円を、月間売上高300万円で割った数値。
■ 前年と商品構成や販売価格が異なる場合
商品の入れ替えや、新たにコース料理や食べ飲み放題などの追加、また、セールなどを行うときは、事前に商品販売計画表を作成し、原価及び原価率の着地がいくらになるのか予測しておきます。
それを基に当月仕入目標を決定することになります。
サポート会員様には「仕入原価管理表」の作成もサポートさせていただいております。
まとめ
仕入を業者別又は、食材別に管理することにより、どの業者の仕入れが多く、原価(原価率)が高くなっているのかが分かり、対策を講じることができます。
この仕入原価(率)を基に「うちのお店の原価(率)は〇〇%と判断されている個人店が多々あります。
なぜなら、理論原価計算は、個別の商品ごとに原価を算出しておかないと計算できません。また、実際原価は毎月の棚卸が必要だからです。
もし、仕入原価のみで原価管理をする場合、上記を参考に原価管理表を作成し、目標値と照らし合わせながら、日々の原価管理(マネジメント)を実施しましょう。
それが、原価を管理する第一歩になるからです。
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