労働分配率とは、飲食店を経営する上で非常に重要な指標の一つです。
労働分配率が適正値より高いと、会社は無理をして給料を支払っていることになり、長期にわたってお店を経営することは困難になります。
飲食店では適切な人件費を算出する指標として、人件費率・人時売上高・人時生産性・労働生産性・労働分配率などがあります。
中小個人店においては、人件費率(売上高に占める人件費の割合)のみを使用しているお店が多いですが、人件費率と労働分配率は関係性があります。
人件費率と労働分配率の関係は、本文の「労働分配率シュミレーション」で解説していきます。
writer:Asuka Food Consulting
Table of Contents
売上総利益とは
労働分配率を計算するには売上総利益を出す必要があります。
売上総利益とは、
売上高から原価を引いた残りが、売上総利益(粗利益)です。
売上高-原価=売上総利益
売上高から原価しか引いていないため、人件費は、売上総利益(粗利益)の中に含まれています。(上記の図参照)
粗利益とは、売上高から原価を引いたもの。原価しか引いていないため、粗い利益(粗利益または粗利)といいます。会計用語では、売上総利益といいます。
労働分配率とは
労働分配率とは、売上総利益(粗利益)に占める、人件費の割合のことです。
人件費を売上総利益(粗利益)で割ることにより、売上総利益に占める人件費の割合を算出することができます。
労働分配率の計算式
人件費÷売上総利益×100%=労働分配率
で表されます。
例えば、人件費 90万円 売上総利益(粗利益) 210万円なら、
労働分配率は、
90万円 ÷ 210万円 × 100% ≒ 42.9% です。
労働分配率は、売上総利益(粗利益)に占める人件費の割合です。
売上総利益を100%としたときの、人件費の占める割合は、42.9%と言う意味です。
労働分配率の適正値
飲食店における労働分配率の適正値は、40%前後です。
A 35%~37% 目標値
B 38%~42% 適正値
C 43%以上
43%を超えてくると、無理をして人件費を払っていることとなり、場合によっては、売上総利益に占める人件費の割合が多すぎるため、赤字に陥っている可能性もあります。
逆に、目標値を下回る場合、サービスが低下していないか、商品の品質はどうかをチェックする必要があります。
上記の図は、
左・・・労働分配率 40%
真ん中・労働分配率 35%
右・・・労働分配率 45%
※わかりやすいように諸経費は除いている
40%より下回ると、売上総利益に占める人件費の割合が低くなるので、利益が増えます。(図真ん中)
40%より上回ると、売上総利益に占める人件費の割合が高くなるので、利益が減少します。(図右)
自店の当月の労働分配率を計算してみよう
労働分配率の計算式は、
人件費÷売上総利益×100%ですので、売上総利益を計算するのに、売上高と原価が必要になります。
月間売上高
原価
人件費
の三つが必要です。
月間の売上高は、毎日の売上高の合計です。原価は、実際原価を使用するのが望ましいですが、無理なら理論原価または仕入原価である、当月に仕入れた食材(ドリンク含む)の合計額を使用します。人件費は当月の社員とアルバイトを合算した総人件費です。
労働分配率を下げる方法
まず、労働分配率の計算式を分解してみます。
労働分配率 = (社員の人件費 + PA人件費) ÷ (売上高 - 原価)
上記の式から労働分配率を下げるには、
・人件費を下げる
・原価を下げる
・売上高を上げる
の三つが必要になります。
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労働分配率を正しく適正値に近づけるには
上記の三項目を実施することです。
売上高を上げる施策+粗利益を稼げるメニュー作り+売上高による適正な人員配置
となります。
人件費を下げることだけを実行してもお店の継続はありません。
売上が上がっているお店で、労働分配率を適正値から目標値に近づけると、サービス低下により客離れが起こります。売上が下がっているお店も同じです。
大手チェーン店と中小個人店を比べると、ほとんどすべての指標(FL・人時売上・接客生産性等)において大手が勝っています。理由は、全てにおいて「システム化」していることです。
人件費については、従業員の育成プログラムが整っており、また、店内導線やキッチンのオペレーションシステムが最小の動き、最低の調理工程等により、人の働く、人が動く量が、最小でかつ最大限の付加価値を生むようになっているからです。
粗利益も同じで、粗利益が稼げるメニューを複数持っていたり、資金力により売上を上げる為の販促を常時行えるなど、中小個人店とは異なります。
従って、大手の指標のみをみて、数字だけを合わせに行くのは、中小個人店においては無理があります。
人件費削減は手っ取り早いですが、売上を上げる施策、粗利益を稼げるメニューの投入を実施し、人件費については、教育と訓練をしっかりと行い、いつ売上が上がっても対応できるよう育成しておくことが重要なのです。
労働分配率シュミレーション
売上高 300万円 原価 90万円(30%) 人件費 90万円(30%)の場合
問題1 労働分配率はいくらですか?
問題2 人件費を調整し、労働分配率を40%にするための、人件費及び人件費率はいくらですか?
問題3 原価を調整し、労働分配率を40%にするための、原価及び原価率はいくらですか?
問題4 労働分配率を40%にするための、売上高はいくらですか?
問題5 今年の目標売上高が310万円、原価率はロスを見直し29%と予想している。労働分配率を40%にするためには、人件費及び人件費率をいくらにすればよいですか?
解答1 300万円-90万円=210万円(粗利益)
90万円÷210万円×100%=42.9%
解答2 求める人件費÷210万円×100%=40%
求める人件費=84万円 人件費率 28%
解答3 90万円(人件費)÷40%=225万円(粗利益)
300万円-225万円=75万円(原価)
75万円÷300万円×100%=25%(原価率)
解答4 90万円÷40%=225万円(必要粗利額)
225万円÷(1-30%)≒321万円(売上高)
解答5 310万円×(1-29%)=220.1万円(粗利益)
求める人件費÷220.1万円=40%
求める人件費≒88万円(人件費)
88万円÷310万円×100%≒28.4%(人件費率)
補足 問2の問題と解答より、労働分配率は人件費率と関係があることが分かります。労働分配率も人件費率も月末の結果のみを見るのではなく、日々チェックしながら管理することが可能です。
但し、労働分配率で日々の人件費を管理する場合、その日の売上総利益(粗利益)を出す必要があります。その為には、会計システム(POS)の設置が必要です。
人件費率であれば、当日売上高と当日人件費で計算できますので、労働分配率を参考に、人件費率で管理することとなります。
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労働分配率・労働生産性・人時生産性の関係
労働生産性に労働分配率を掛けると、1人当たりの支払い可能給料額が計算できます。
労働生産性 × 労働分配率 = 一人当たりの支払い可能給料
また、人時生産性に労働分配率を掛けると、一人当たりの支払い可能時給が計算できます。
人時生産性 × 労働分配率 = 一人当たりの支払い可能時給
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