飲食店では、月末に「棚卸し」(たなおろし)といって、在庫の数量を調べ、それを金額で表します。
棚卸しを実施すれば、使用した食材の量や在庫=資産を把握することができます。
ここでは、効率よく棚卸しを実施する方法を説明します。
writer:Asuka Food Consulting
>仕入原価の基礎知識
>理論原価の基礎知識
>実際原価の基礎知識
Table of Contents
飲食店舗の棚卸しとは
店舗に今ある在庫(資産)の数や量を調べて、それを在庫金額として表すことです。
棚卸しはなぜするのか?
食材を棚卸しすれば、お店に今ある食材の資産はいくらなのかが分かります。
棚卸しの頻度は?
飲食店は、毎月、月末に実施します。
食材は保存期間も短く、仕入れたらすぐに売り切ることです。
棚卸しをすることにより、不良在庫化しにくくなります。
また、「使用した食材の金額はいくらなのか」を計算することができます。
これを実際原価計算といいます。
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棚卸しは店長の責務
店長は会社から「経営資源」である「人・モノ・金」を預かり、それを活用して利益を出すのが仕事です。
食材は経営資源の「モノ」にあたり、会社のお金で購入するため会社の資産です。
店長が管理している、その資産(食材)が、現在いくらあるのかを把握することは非常に重要なお仕事なのです。
在庫が多いということは、食材という資産を現金化せず、お店で寝かせている状態であり、現金化できなければ利益を圧迫するのです。
そうならないために、お店の適正な在庫はいくらなのかを把握する必要があります。
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決算に棚卸しは必要
個人経営なら、毎年12月末が決算月なので、12月末に棚卸しを、法人なら、企業により決算月は異なります。
実際原価の計算式は
実際原価(売上原価)=期首材料棚卸高+当期材料仕入高-期末材料棚卸高
棚卸しは、年一回決算月には必ず実施します。
飲食店は、月毎に実施することにより、絶えず資産管理をすることが適正な利益を把握するうえで大切です。
棚卸し前の5つの準備
準備をしておくことで、棚卸に掛かる時間を、大幅に短縮することが可能です。
➀ 冷蔵庫や冷凍庫、食材保管棚の整理整頓
普段から整理整頓を心がけていれば、事前に行う必要はありません。
繁盛しているお店は整理整頓ができているのです。
➁ 空箱や空ケースの処分
当日、箱を開けて中を確認することがないよう事前に実施
段ボールは害虫の住み処となるため処分
➂ 業者からのサンプル食材は、カウント除外
サンプル(無料食材)はカウントしないよう、予め別保管や「サンプル」と記しておきましょう。
➃ 食材を計量するための秤やメジャーカップ、メジャーの準備
使いかけの食材を計量し、できるだけ正確に金額を算出するのに必要です。
➄ 記入するためのフォーマットや食材一覧を記したメモの用意
使用している食材の一覧表は必須です。
白紙のメモ用紙に食材名と数(量)を都度記入すると必ず漏れや重複がおきます。
あらかじめ、食材一覧をエクセルで作成し、ノートパソコンやタブレットに入れておきます。
現場で在庫数を入力するだけで金額を自動計算できるようにしておけば、かなりの時短となります。
仕込み済み食材の計測は?
ボトルに入ったドレッシングなどの使いかけの食材は、秤やメジャーなどで計測し、0.3や0.7など単位を予め決めて計測します。
唐揚げ等の仕込み済みの食材は、仕込んだ状態の金額(仕込み商品原価)を算出しておき、調理マニュアル等にレシピ化しておきましょう。
例)唐揚げ10kgの仕込み 仕込み原価〇〇〇円
在庫の唐揚げが5kgなら、仕込み原価の半分の金額ということです。
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棚卸し実施のポイント
最初は時間がかかると思います。
慣れてくれば棚卸に掛かる時間が短くなり、正確性もアップします。
ポイント
➀ 基本は二人で行う。一人がカウントし、もう一人が確認後に記入または入力する。
➁ 使いかけの食材の計算(実施ポイントの説明参照)
➁ 入力時の転記ミスに気を付ける(復唱)
➂ 計算ミスはないか確認する。
➃ 実施日、実施時刻、実施者のサインをする。
➄ 提出が必要なら期日までに提出する。
棚卸しは慣れも必要なので、最初は時間も掛かります。また、アイテム数が多い場合、未検品も出る場合がありますが、毎月実施していると正確性も上がってきます。
中小個人店では、社員が一人というお店も少なくありません。その場合は、アルバイトに教育して、手分けして実施しましょう。
例えば、ドリンクをアルバイトにやってもらうとか、冷蔵庫、冷凍庫、バックヤードなどポジション分けすると良いと思います。
居酒屋などのフードアイテムが約100品以上のお店でも、慣れてくれば30分ほどで完了できます。
「棚卸し」はいつ行えばよいか?
棚卸しは、毎月末の営業終了後から翌月の営業開始前までに実施するのが望ましいです。
しかし、昨今の人手不足や人件費の高騰により、最近では大手チェーンでも毎月末の営業時間内に実施する店舗も増えています。
営業時間中に分担しておこなう
効率よく棚卸しを実施するには、ドリンクとフードに分ける、食材も常温品や冷凍品などに分けたり、厨房内とバックヤード(食材保管庫)にポジション分けし、数人で分担して行うと短時間で終わります。
その後、パソコンで集計します。
また、タブレットに予めエクセル等でフォーマットを用意しておき、入力しながら行うと、さらに時間が短縮されます。
飲食店の在庫数の把握は、本来、毎日行う必要があります。
なぜなら、生鮮食品など日持ちがしない食材を多く取り扱うため、翌日に必要な分を、当日に発注または当日の営業前に買い出ししておかなければならないからです。
お店によっては、棚卸しをウイークリー業務化しているところもあります。
食材以外の棚卸しについて
棚卸しは食材だけではなく、陶器備品や消耗品の棚卸も実施します。
陶器備品を棚卸しする理由は、破損や紛失等により数が減ってしまうと、ピーク時に対応できない可能性もあり、事前に適正在庫を決定し、足らなければ買い揃えます。
消耗品も同じです。食洗器の洗剤やリンスなどは、一回の発注で数千円から数万円かかります。タンクに予めメジャーで線引きしておき確認することによって月毎の使用量を金額に直すことも可能となります。
食洗器を最初に設置した状態のまま、使用しているお店が多々ありますが、
食洗器には時短機能や、洗剤の量を変更することも可能です。
もし、食洗器に入れる前にしっかり中性洗剤で手洗いを実施していて、
食洗器の時短機能や洗剤の量を減らしても、きれいに汚れが落ちているなら
設定を変更してみましょう。洗剤やリンスの経費は下がります。
まとめ
棚卸しの準備と実施時のポイントをしっかりと把握し、正確に作業できるよう実践してください。そうすることにより、資産を正確に把握でき、実際原価の精度も上がります。
飲食店で必要な三つの原価を理解しよう。