ABC分析とは、管理する対象が多すぎて一様に管理することが難しいときに、ABCと重要度の高い順に並べ、重点的に管理する手法です。
飲食店でABC分析を使った代表的な管理は「商品管理」です。何が売れていて、何が売れていないのか。お店のウリとなる商品は継続的に売れているのか。また、売れていない商品は何かをデータから把握することにより、次の一手が打てるのです。
writer:Asuka Food Consulting
Table of Contents
個人店の店長こそ実践してほしいABC分析
大手チェーンでは、スーパーバイザーや幹部などが店長に代わって商品分析を行います。それにより、売れ筋商品ならもっと売れる施策を考え、死筋商品は、次回メニュー変更時に入れ替える為、商品開発部と連携を取り、新商品の開発を依頼します。
しかし、中小個人店となると、この作業を店長自らが行う必要があります。仮に料理長がいれば協力して新商品の開発を実施することとなります。
ABC分析により、売れ筋商品と死筋商品がはっきりすれば、商品開発の方向性、価格設定、商品説明や商品画像を含むメニューブックの載せ方、提供方法、販売促進方法などをどのようにすれば良いのかが分かります。
ABC分析は、メニュー入れ替えを検討するときだけではなく、日頃から、商品の販売動向を注視しておき、A商品が売れる理由を探し出して、商品開発に活用するのです。
飲食店におけるABC分析とは
飲食店の扱う商品は複数あり、どの商品(商品名)がどれだけ(数量)売れていて、それらの個別商品の売上高はいくらで、売上に占める割合(売上高貢献度)などを人の手で把握するのは困難です。
中小個人店であっても、メニュー数が多い場合、POSシステムのレジ導入を考えて見ましょう。システム購入にあたっては、国からの補助金が出ている場合があります。
ABC分析とは、商品ごとの販売数量、売上高、売上高に占める個別商品の割合などを表にし、売上高の高い順に並び変えることによって、売上高の高いものから、ABCとランク付けし、管理する手法です。
※POSレジを導入する場合、ABC分析が自動計算され、データをパソコンのエクセル等に落とすことができるレジがベストです。エクセルで落とせれば、理論原価を使用した原価率削減のシュミレーションが可能となります。
ABC分析表
下記の表は、商品別ABC分析表(料理)の例です。
ABC分析表を作成する場合、ドリンク(飲料)とフード(料理)は別々に作成します。
※ドリンクやフード以外にも、デザートやセット商品、コース料理なども別途算出します。
また、カフェなどで、モーニングメニューやランチメニューなど、時間帯で異なる商品を販売している場合も、モーニングメニューのみのABC分析を算出すると、どの商品が売れていて、どの商品が売れていないのかを感覚ではなく、数字で把握できるので、売れている商品は重点管理し、売れていない商品は終売、新しい商品の導入を検討しやすくなります。
■売上構成比とは
売上高の合計を100%としたとき、各商品の売上高の割合のことです。
各商品の売上高 ÷ 売上高合計 × 100% = 売上構成比
■累計構成比とは
売上高の高い順に並び替えたあと、売上構成比を各商品ごとに順に加算した数値です。
商品をABCに分ける基準
商品をABCに分ける基準は下記の通りです。
Aランク・・・累計構成比 0%~75%未満
Bランク・・・累計構成比 75%以上~95%未満
Cランク・・・累計構成比 95%以上~100%
ABC分析表から何がわかるのか
売れ筋商品である、Aランク商品を重点管理することにより、お店の売上が左右されます。
Aランク商品はお客様の支持が高い商品ですので、売り切れによる機会損失は絶対に出してはいけません。なぜなら、Aランク商品を食べるためにわざわざお店に足を運ぶお客様が多くいるからです。
Aランク商品とは、
お客様に支持されている商品であり、上記の表でいえば、お店全体の売上の60%以上を占めている商品と言うことになります。
重点管理とは、現状の品質や価格、販売方法などを変えずに水平展開。あるいは、A商品をウリとした販促を強化することにより、さらに売上を上げることが出来る商品です。
Cランク商品とは、
Aランク商品とは反対にお客様に支持されていない、死筋商品といえます。
メニュー入れ替え時に削除対象になる商品群です。
中小個人店では、Cランク商品の放置が多々あります。理由として、新メニューが開発できない。メニュー表が作成できないの二つの理由によるものが多いようです。
厳しく言うと、出ないメニューを何年にも渡り売り続けるということは、お店を任されている店長としては失格です。売れないということは食材が回転しないということ。食材という資産を寝かしており、場合によっては、食材(資産)の廃棄にもつながります。
Bランク商品とは
Aランクの売れ筋商品とも、Cランクの死筋商品とも違う商品のことです。
Aランクになりうる可能性のあるBランク商品
Aランクの直ぐ下にあるBランク商品の売上高を見た場合、Aランクの下位商品の売上高とさほど変わらない商品がBランクにあれば、メニューに商品画像を載せたり、差し込みメニューとして別に販売することにより、Aランク入りすることもあります。
また、Bランクの上位になくても、粗利額がとれる商品なら、上記のような販促を実施して、継続するか否かを判断しましょう。
Bランクに売りたい商品がある場合
積極的にお客様に声掛けするなど、店側から売る努力をしましょう。売る努力のことを「商品を育てる」といいます。黙っていても売れる商品(流行商品)は、知らない間に売れなくもなります。売る努力をして育てた商品は息も長くなるものです。
ABC商品の比率について
大手チェーンのABC分析を見ると、おおよそ各項目が、33.3%に分かれています。
A商品が10%以下なら
お店のウリとなる商品が不足している可能性があります。一般的な居酒屋の料理アイテム数は70品ほど。10%なら7品です。33%なら23品ほどになります。
要するに、7品以外のメニューには、お客様は価値を感じていない可能性があるのです。
但し、ラーメン屋など業種によっては、醤油ラーメンの1品をウリとし、あとは唐揚げなどのサイドメニューのみのお店も存在します。
A商品が50%以上なら
食材管理やオープン前の準備、場合によっては、仕込みの量の多さなどが業務の負担となっている可能性があるのと、ピーク時に出るアイテム数の多さから、商品自体が煩雑になり、また、調理担当人数が増加する可能性があります。
Cランク商品である死筋商品は全て削除してよいか?
Cランク商品を全て削除しても、ABC分析の算出過程上、Cランク商品は必ず出ます。
Cランク商品を削除する前に、一部のコアなファンがいないか、また、Cランク商品が出ることによって、BまたはAランク商品を注文されるお客様がいないか等を考えてから決断しましょう。
期間限定販売のグランドメニュー化
シーズンメニューや差し込みメニューなどの期間限定メニューが、グランドメニューよりヒットすることも多々あります。
例えば、三か月限定販売ならABC分析を利用して、商品の売れ筋状況を監視することも可能です。販売した当初は、Bランク最下位でも、三か月後にBランク上位に入っていることもあります。
その場合は、その商品はお客様に支持され始めている商品ですので、グランドメニュー化を検討することも大切です。
また、先のBランクで説明したように、Bランク商品をリニューアル販売したときも、動向をチェックし継続するのかの判断をしましょう。
ABC分析を活用できないフランチャイジーにおける弊害
フランチャイズのウリは、どこも同じメニューと価格です。そうすることにより、お客様に安心感を提供しているのです。しかし、お客様の食に対する趣向が多様化し、立地や客層、利用動機のことなる店舗が多く存在する現代では、以前と同じメニュー戦略では通用しないお店も存在します。
フランチャイジー(加盟店)では、Bランク上位に位置する商品であっても、全体的に見て低ければ、メニュー更新時に廃止となることも多々あります。最近では、基本メニューはそのままで、店舗別メニューの導入や加盟店自ら考案したメニューの導入も本部の承諾を得れば販売できるチェーンも出てはきましたが、一部のチェーンに限られるようです。